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○○ママの好きなこと・大切なこと 愛をもらった人間しか、愛を与えられない。

2022年11月8日 公開 / 2024年10月8日 更新

カクイチ加藤商店 統括 佐々木真実子さん

札幌の農産物卸売会社「カクイチ加藤商店」で統括を務める佐々木真実子(ささきまみこ)さん。5歳の長女を育てながら、祖父の代から続く会社の経営に奔走しています。さらに今春にはコロナ禍で余ってしまったお米を子ども食堂へと届けるクラウドファンディングを開始し、目標金額の2倍以上の寄付を集める事にも成功。自身の子育てや社会への思いについてお話を伺いました。

仕事ができない理由を、子どものせいにする社会ではいけない。


ー家業でもあるお仕事について詳しく教えてください

弊社、加藤商店は67年前に祖父が小樽で開業、当初は魚や山菜、豆などを扱う問屋でした。現在社長を務める父の代で手稲に移転し、今はお米や雑穀、豆、青果とたまごの卸売が中心。生産者さんの所へ直接買い付けに行き、市内のホテルや学校給食センター、飲食店にお届けしています。

ー佐々木さんはいつごろからお勤めですか?
私は大学卒業後に7年ほど大手の卸売会社で修行した後、2006年に入社しました。配送スタッフからスタートしてもう16年。父に休んでもらうためにも、あと数年で家業を継ぐ志でいます。


ーご出産時について教えてください

5年前に娘を出産しました。その後ゆっくりと産休を...と言いたいところですが、私は立場上あまり休むことができずに苦労しました。
ーたしかに。どう両立しているんですか?
まずは限られた時間で仕事をこなすために仕事の効率化、スケジュール管理の見直しをしました。でも、お客様の所を訪問したり、商談をしたりという予定はどうしても外せません。そんな時は職場の人や友人に保育園への迎えを代わってもらいました。「1000円あげるからお願い!」と言って(笑)。一人で子育てするのは最初から無理だと分かっているので、母に預けたり、子どもを職場に連れてきたり。みんなに面倒を見てもらっています。

ー職場に子どもを連れてくるのは、いいアイデアですね
弊社は昔から主婦のパートさんが多い職場でしたので、子育てと両立する風土があったんです。私の母もバリバリと働いていましたので、私もよくこの職場に連れてきてもらった記憶があります。女性が子どもを連れて来られる会社が、もっと増えるといいですよね。仕事ができない理由を子どものせいにする社会ではいけないと思うんです。

ーお客さんからも理解を頂けてますか?
取引先も農家さんもとても優しいです。昔から取引のある農家さんの所へ子どもを連れて訪ねると「(佐々木さんの)お母さんもそうだったよ」「母さんソックリだ」なんて、笑ってくれたことも。仕事人間なところまで似てしまったようです(笑)。

「自分も小さな頃、親戚や職場だけでなく、農家さんなどたくさんの地域の人から育ててもらいました」と佐々木さん(提供写真)

生産者が想いを込めたお米を、全国の子どもたちへ。

ークラウドファンディングをはじめたきっかけは?
2019年に買い付けて、2020年に販売予定だったお米のほとんどがコロナ禍により出荷停止となり、倉庫に山積みのまま残ってしまったんです。在庫を抱えていると新しいお米を買うこともできなくなります。農家さんもウチが買わなければ収入が減るし、同じように在庫を抱えてしまう。でも、農家さんたちが丹精込めて作った汗と涙の結晶であるお米を捨てるなんて事は、私たちにはとてもできません。

ーそこで、子ども食堂へ送るという方法を思いついたんですね
ちょうど昨年(2021年)の10月、ある講演会で(一社)ロングスプーン協会が行っている「フードリボンプロジェクト」の事を知り、感銘を受けました。

ーどんなプロジェクトなんですか?
一口200円の寄付を募り、その資金で食事券にあたる「夢チケット」を発行、加盟する飲食店へ配布します。地域の子どもたちは加盟店に置いてあるチケットを使い、無料で食事の提供を受けることができるという仕組みです。

ー支援の背景には自身が子育てしている影響も?
それだけでなく、身近にシングルマザーがたくさんいる事も大きいです。北海道は全国的に見て離婚率が高いことで知られています。ただでさえ経済的に困窮するシングルマザーが多いのに、コロナ禍や物価高騰がさらに、貧困への追い打ちをかけている。北海道で食にかかわり、多くのパートさんで支えられている企業として、どうにか取り組まなければならないと感じたんです。

「活動を通じて、農業の大切さや面白さも子どもたちに伝えたい」と佐々木さん(提供写真)

ー反応はいかがでしたか?
当初目標の100万円をあっという間に達成し、最終的に2倍以上の226万3000円になりました。これはお米約7トン以上を、全国700件近くのお店へ30キロずつ発送できる金額です。

ーすごい!
クラウドファンディングだけでなく、取引したことがない農家からお米の提供をいただいたり、当社に来て現金をくださったりする方までいて本当に驚きました。たくさんのメディアでも取り上げられて、フードリボンプロジェクトや子ども食堂の知名度にもつながったと実感しています。

ーどんな形で寄付を?
フードリボンプロジェクトを通じて全国へ送るほか、社会福祉協議会などにも送る予定です。シングルマザーや子ども一人ひとりや、飲食店に宛てた応援メッセージも同封します。

ー支援の輪が広がるといいですね
こども食堂そのものが全国的にも、北海道でもまだまだ不足しているのが現状です。将来的には学校区1つにつき、1件はあるといいなと思います。

クラウドファンディングは2022年7月末から9月末までの2カ月間で実施。当初目標の100万円には1カ月足らずで達成したそうです。

子どもだけでなく、ママも寂しくない社会に。

ーご自身への質問に戻ります。仕事も大変お忙しそうですが、子育てで心がけていることは?
私もぜんっぜん、ちゃんとできていません。家事が苦手で、料理はいっつもうどんばかりだし、たまにお菓子を作ったら全部ボソボソ(笑)。でも、それでも愛情を込めたらいいんだって割り切っています。一人で完璧な子育てなんて、無理ですからね。

ーちゃんとできない事を罪悪感に感じるママも多いですね。
子育てって答えが見つからないのに、みんな答えばかり探しますよね。特に私のように働き詰めだと、周囲から「子どもが可愛そう」なんて言われる機会は多いと思います。

ーたしかに。
子どもだけでなく、ママが寂しくない社会になればいいなって思います。

ーだからこそ、みんなで子育てに参加するようになるといいですね。
私も幼い頃に母や父だけでなく、祖父母や農家さん、取引先など小さな頃からたくさんの愛情をもらって育ったから今があります。自分が愛をもらったから、たくさんの愛情を子どもに与えられる。そう信じて、どんなに忙しい時でも、家に帰ると毎日子どもに必ず「大好きだよ」と伝えているんです。

カクイチ加藤商店 統括
佐々木真実子さん

カクイチ加藤商店Instagram:@kakuichi.katoshouten
カクイチ加藤商店Webサイト:http://e-kakuichi.com/