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○○ママの好きなこと・大切なこと わが娘が繋いでくれるご縁を大切に。

2023年8月8日 公開 / 2024年10月9日 更新

理学療法士 ダウン症×自閉症児のママ なこし ちえさん

スペシャルキッズ(病気や障がい等により、周りからの配慮を必要とする子)を持つママに向けたサポートを行っているなこし ちえさん。ダウン症、自閉症スペクトラム(以下、自閉症)を持つ7歳長女の育児経験から、ダウン症児がいる家族のつながりの場を設けたり、障がい児の家族が支援を受ける手続きや、わが子への理解を深めてもらうための「サポートファイル」「サポートブック」の制作を行っています。活動に至るまでの経緯や、育児にかける想いを聞きました。

Contents

1.「ずっとイヤイヤ期」の娘を愛おしく思えるまで。
2.我が子の"トリセツ"で障がい児のママを支援。
3.自分が子育て下級者だからこそ、人に寄り添いたい。

「ずっとイヤイヤ期」の娘を愛おしく思えるまで。


ーご自身について教えてください

新潟生まれ札幌育ちで、大学を出た後は理学療法士に。20年近く病院や介護福祉施設で老若男女さまざまな方のリハビリをしてきました。2015年、39歳の時にダウン症の長女を出産し、現在は児童デイサービスの仕事をしながらスペシャルキッズのご家族に向けさまざまなサポート活動をしています。

ー立ち入った質問ですが、ダウン症を知った時のご心境は
妊娠当初は穏やかに過ごしていたのですが、22週目に突然「障がいを持った子が生まれます」と診断を受けました。当時は詳しい症状は分からず「筋肉か脳、心臓か骨のいずれか」という、大まかで調べようもない状態。ショックで、混乱し、不安で心が押し潰れそうになりました。


ーそれはお辛い思いを

ただ夫が明るく「どんな障がいを持つ子でも育てよう」と話してくれたことで私も背中を押され、出生前診断を受けずに出産する意志を固めました。その後、通常の出産より4週早い36週目、帝王切開で出産。顔を見てすぐに「ダウンちゃんだ」と気付きました。
ー他に症状は?
極低出生体重児で心臓にも病気を抱えていたので、しばらくの間は保育器の中であちこち管につながれ、抱っこできない状況でしたね。幸い命にかかわる障がいはなく、心臓の病気も4歳のころに手術で治療しました。

ー障がいでいちばん苦労されたのはどんな点ですか?
ダウン症児はゆっくりではありますが、着実に成長するというのが医学的な考えです。しかし娘は周囲の子と比べても特に身体も小さく、発達も遅いと感じていました。定型発達のお子さんと比較をしても仕方がないと思っても、同じダウン症のお子さん達と比べても発達が遅く、育てにくさを感じていたのを、自分の子育てが悪いのだと自分を責めていました。
自閉症の診断を受けたのは3歳11ヵ月で、その時に自分の感じてきた違和感がこの子の抱える特性なんだと受け入れられました。最近はほんの少しですが、余裕も生まれてきています。

ーなぜ、余裕が生まれたのでしょうか
娘が抱える特性をちゃんと知り、関わり方を変えられるようになったんです。娘はこだわりが強く、融通がきかなくて切り替えが苦手。複数の感覚に鈍さや敏感さがあって、日常の行為で苦手なことも多いです。
私の感覚としては、ずっと「イヤイヤ期」が続いているような状態でした。それに加えて、日常生活の行動パターンや手順を変えると癇癪やストライキを起こす、片付けないので私が行うと、本人が一から全部やり直す、お出掛けしても楽しめなくて、すぐに帰宅という事も多々ありました。

ーなぜ、余裕が生まれたのでしょうか
娘のクセのある(笑)特性を受け入れ、関わり方を学び見直したこと、成長し意志の疎通がとれてきたこと、娘の長所や得意なことに目を向けたこと、そして保育園や学校、児童デイの先生や友達に恵まれたお陰で、互いに笑顔でいられる時間が増え、娘の存在が愛おしいと思えるようになったんです。

▲Instagram(@chienowa_yorisoi)では、自らの経験をもとに障がい児ママに向けてさまざまな情報を発信しています。※Instagramから引用

我が子の"トリセツ"で障がい児のママを支援。

ー今はどんなご活動をされていますか?
ダウン症児を持つ家族のつながりの場「トリクマカフェ 北海道店 いろイロ」の副店長を務めています。このカフェは愛知県名古屋市からはじまった場で、全国各地に"支店"があるんです。北海道店は今年3月に立ち上がり、月に1回程度おしゃべり広場を開いています。

▲店長は市外に住むダウン症児のママ。なこしさんはインスタで立ち上げを知った数日後に副店長に声をかけてもらい、参加を即決したそう。

ー他にも、スペシャルキッズのいる家族に向けて「サポートファイル」「サポートブック」の制作支援を行っているそうですね。

私たち障がい児ママは役所や福祉施設など、日々さまざまな機関や組織にお世話になります。その度に書類の提出が必要となるのですが「この情報、どこに書いてあったっけ...」「アレはいつだっけ...」となることが多くて。「サポートファイル」は、母子手帳の延長線上にある成長記録として、手続きの際に必要な情報を一元的にまとめられる資料となっています。

ーなるほど。もう一方の「サポートブック」とは
こちらはひと言で言えば、「わが子の取り扱い説明書」です。福祉施設や教育機関に向けて子どもの心身の状態や特性、そして親の「願い」や「想い」を伝えられる媒体となっています。どちらも私自身が子育てしながら考案しデザイン専門の方に素敵に形にしてもらったので他の人にも使ってもらいたいと思い、お試しのモニターを募って始めました。

▲「サポートブック」の1ページ。特性や食事、トイレなどの支援の際の注意点など

自分が子育て下級者だからこそ、人に寄り添いたい。

ー活動をはじめるきっかけとなったのは?
生後半年ぐらいの最も孤独感を抱えていた時期に、同じダウン症児の先輩ママと知り合い、寄り添ってくれたことで助けられました。そのママさんがダウン症児のママ達との出会いの場所を紹介してくれたことで、今につながっています。この経験から、今度は私が力になりたい、孤独な家族がいたら寄り添いたいと思うようになりました。
私は子育て下級者です。今だってずっと悩みながら、手探りでこの子を育てています。でもだからこそ、同じように不安で、悩んで、日々奮闘しているママの気持ちが分かる。ママであることを尊敬し、共感して寄り添い力になれることがあるのではないかと思ったのです。
ー今後はどのような展開を考えていますか?
作成したサポートファイルやサポートブックが一時的なものではなく、どう活用し、未来に繋げてもらうかが課題です。
また療育を思うように受けられないお子さんに理学療法士の経験、デイサービスでの学び等を生かし、地域での支援に繋げたいという夢も抱いています。あとはトリクマカフェを北海道各地で開催したり、ダウン症の啓蒙活動を仲間と一緒にしていきたいと思っています!

ーお子さんが生まれたことで変化したことは何でしょう
以前は子どもに関係した仕事をしようと思ったことはなかったのですが、この子が生まれ、様々なスペシャルキッズやご家族、支援者の方と出逢い、素敵な仲間もできました。仲間と出会えたのは、この子のおかげ。すべては我が子が繋いでくれた縁なんです。

ーありがとうございました!

理学療法士 ダウン症×自閉症児のママ
なこし ちえさん