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○○ママの好きなこと・大切なこと ひとりじゃないよ!

2023年8月25日 公開 / 2024年10月9日 更新

北海道リトルベビーサークル「ゆきんこ」共同代表 小倉 舞さん

小倉舞さんは中学2年生の長男、小学6年生の長女、そしてリトルベビー(低出生体重児)として生まれた4歳次女を育てるママ。次女の育児に不安や孤独を抱いた経験をもとに昨年「北海道リトルベビーサークル ゆきんこ」(@yukinko_hokkaido)を結成し、「リトルベビーハンドブック」の普及活動を行っています。ご自身の経験や活動に対する想いや、ママとしての前向きな気持ちの変化についてお話をお聞きしました。

Contents

1.ペットボトル1本分の小さな命。
2.つらい人を増やさない、取り残さないために。
3.小さな子がくれた、大きな勇気。

ペットボトル1本分の小さな命。


ーご出身はどちらですか?

北海道松前町です。函館の短大を出た後は保育士として勤め、5年目に結婚。その後、夫の転勤の都合で2016年に札幌に来ました。現在は「ゆきんこ」の活動をしながら保険会社の営業として働いています。

ー娘さんがリトルベビーとして生まれてきた時のことを教えてください
2018年の12月に妊娠して、7ヶ月経った頃に胎動が無くなったことに偶然気づいたんです。いつもお腹をポンポンと触るとぐっと押し返してくれたのに、その日だけ反応がなくて。「おかしいな」と思い病院へ行ったところ、羊水が減っていることが発覚し、緊急入院しました。それから1カ月後の妊娠8カ月で緊急帝王切開で出産。体重597グラムのリトルベビーでしたが、幸い命にかかわるような病気や障がいはなく生まれてきてくれました。


ー出産してすぐの娘さんのご様子は

わずかペットボトル1本分の重さしかない、小さな小さな身体。「本当にこんな小さな子が生きられるのだろうか」という不安でいっぱいでした。さらに生まれてすぐにNICU(新生児集中治療室)に入ってしまい、抱くこともできない状態で不安はつのるばかり。初めて抱っこしたのは体重が1000gを超えてからで、退院には4か月かかりました。娘を見るたびに「ごめんね」という気持ちがあふれ、自分を責めてばかりの日々が続きました。

▲生まれたばかりの頃の次女、悠愛(ゆな)ちゃん。

▲出産当時の娘さんの身長・体重を模したぬいぐるみ。

ー同じ境遇のママさんやご家族は周りにいましたか?
身近にはいませんでした。リトルベビーについてわからない事や不安も多く、ネットで調べてみるものの、余計に不安になるような情報ばかりが目についてしまって...。

ー相談相手が身近にいないのは辛いですよね。サークル等はなかったのでしょうか?
リトルベビー向けのサークルがあるか、保健師さんに訪ねると「今はなくて...」という答えでした。聞けば、昔はあったものの当事者の子たちが成長して大きくなり、自然消滅的になくなってしまったようなのです。そんな中、他県で導入が進んでいると知ったのが「リトルベビーハンドブック」の存在でした。

つらい人を増やさない、取り残さないために。

ーリトルベビーハンドブックについて教えてください
通常の母子健康手帳では、発育曲線グラフの体重は1kgから、身長は40cmからしか書き込むことができないんです。うちの子もしばらくは成長の記録が書けませんでした。
例えば「寝返りをしますか?」などの項目に対しても体重を基準に「はい」「いいえ」で答える形なので、できない事が多くて。「いいえ」が続くととても悲しい気持ちになりました。生まれてすぐ、ママにこの現実を付きつけることへの負担はとても大きいと感じます。
一方、リトルベビーハンドブックでは、成長曲線の目盛りが0から始まっていたり、成長記録も「気付いた日」や「できた日」を記入できます。道内では苫小牧でしか作成されていない状況でした。

ーそこでハンドブックの普及活動をはじめたんですね
SNSで知り合った道外のリトルベビーのママから「北海道でもサークルを作って全国にハンドブックを広げませんか?」と声をかけていただいたんです。勇気づけられた私はインスタで知り合った同じくリトルベビーママの高橋日奈さんに声をかけ、共同代表という形で「ゆきんこ」を立ち上げました。

▲ハンドブックには各ページに「ゆきんこ」メンバーの体験談やコメントが記されています。「ポジティブなコメントに励まされた」という人も多いのだとか。

ー今年1月に北海道版ハンドブックが発行されたとか。
サークルを立ち上げて、北海道知事宛に要望書を提出したのが昨年5月。それから1年も経たない異例のスピードでの実現でした。活動に賛同してくださった方や、取り上げてくださったメディア、発行資金をご提供くださった企業など多くの方々からの支援のおかげです。初回発行分はすぐに在庫が少なくなってしまったので、すぐに増版もされました。

ーサークルの活動で大切にされていることは何ですか?
ゆきんこのテーマは「1人じゃないよ」。つらい思いをしている人を1人でも増やさない、1人でも取り残さないように、悩みを共有したり共感したりする事を何よりも大切にしています。
現在サークルのメンバーは79名ですが、サークルには勇気や機会が無くて入れていないけれど、発信や活動を見て応援してくれている人もいるみたいです。そんな方々も安心できるように地道に発信は続けていければと思っています。

▲贈呈式での様子。左から共同代表で留萌在住の高橋日奈さん、鈴木知事、小倉さん(提供写真)

小さな子がくれた、大きな勇気。

ーハンドブックを発行して達成、ではなくこれからも活動を続けられるのですね
今後はリトルベビーの周知、ハンドブックの普及活動をさらに拡大して、同じ悩みを持つママたちが交流できる機会も増やしていきたいですね。コロナ禍もあり、オンライン上でしか会えなかったメンバーも多いので、今後は対面の機会も増やしたいなって。

ー具体的に活動が決まっている予定はありますか?
昨年は、11月17日の「世界早産デー」に合わせて、札幌の地下歩行空間と室蘭市で写真展や展示のイベントも行いました。今年も同じ11月17日前後にどこかの場を借りて写真展を開きたいと考えています。

▲昨年の写真展での様子。「ママだけでなく、学生さんやお年寄りなど色んな人に見て理解を深めてほしい」と小倉さん(提供写真)

ー次女が生まれてから、変わったことはなんでしょうか?
未経験のことでもグイグイと挑戦する機会がグッと増えましたね。私は「自分のため」にはなかなか腰が重い人間でしたが、「人のため」であれば積極的に動きたい。さらに信頼できる仲間となら何だってできる。そう気付かせてくれたのも、出会えたのも、次女が生まれてきてくれたからだと実感しています。

ーいま挑戦していることは?
元々勉強が好きなタイプでしたが、今はさらに意欲が増して資格の勉強にも励んでいます。実は先日、FPの資格を取得したばかりなんです。次は行政書士をとりたいなあなんて...。娘とともに私の「やればできる精神」もグイグイと成長しています(笑)
ーすごい!向上心が高くて素敵です
3年近くは寂しい思いをしたり、悩みを抱えていたのでその反動かななんて(笑)。以前はつらくて見れなかった小さな娘の写真を見れるようになりました。「早く産まれたかったんだね」って前向きに考えたり。やっと娘と向き合えるようになったんです。今は本当に可愛くて可愛くて、見てください...(スマホを取り出す小倉さん)

▲現在の次女・悠愛ちゃん。病気もなく元気に育っているそうです。

ー(笑)。最後に、ママとして大切にしている事を教えてください
子どもたち3人が本当に大好きなんです。いつも、何かあったらいつでも守るからね、ということは伝えています。笑顔で包み込むように、いつでも味方だよってことは伝え続けていきたいですね。

ーありがとうございました!

北海道リトルベビーサークル「ゆきんこ」共同代表
小倉 舞さん

北海道リトルベビーサークルゆきんこ Instagram:@yukinko_hokkaido